副鼻腔炎に至る成因とは?
感染的要因
ウイルス・細菌感染
ウイルスおよび細菌が鼻腔から自然口を通じて副鼻腔に逆行性感染することで急性副鼻腔炎が発症します。発症した副鼻腔炎が長い期間続いたり、急性炎症の反復によって慢性副鼻腔炎へ移行します。
新入児や幼児は、上顎洞が未発達で骨壁が厚く血管が富んでおり、上顎洞骨髄炎として発症することがあります。全身疾患として糖尿病の合併、局所要因として歯根尖部の炎症が原因や契機になる場合があります。
真菌感染・乾酪性副鼻腔炎・副鼻腔真菌症
鼻腔が広く空気の流出入量が多い側に生じやすいことから、真菌が侵入しやすい局所条件が成因として重要と考えられています。
また、副鼻腔内の嫌気的な環境が真菌の発育を促すとされており、副鼻腔の中で上顎洞に最も発症しやすいそうです。原因菌としてアスペルギルスが最も多くカンジタやムコールがこれに次ぎます。
アレルギー要因
アレルギー性鼻炎患者で、感染の合併を疑わせる所見がないようにもかかわらずレントゲンで副鼻腔に陰影を認める場合があります。副鼻腔炎に侵入沈着した抗原に対するアレルギー反応によって生じると考えられていますが、直接的な証左はないそうです。
固有鼻腔における高度のI型アレルギー反応によって自然孔の閉鎖が生じることやアレルギー性炎症の副鼻腔への波及などもその発症機序として推測されます。
多くは軽症で、水溶性あるいは粘液性の鼻水を特徴とし、感染性の副鼻腔炎にみられる黄色い膿性や粘膿性の鼻水が伴うことはありません。また、I型以外にⅢ型、Ⅳ型のアレルギーも要因の一つと考えられています。
生活環境が深く関わっている
- 食生活が動物性タンパク質や脂肪摂取量の増加に伴う栄養の向上
- 抗菌薬、抗炎症薬、アレルギー治療薬の開発、向上
- 大気や水質の汚染
これらはアレルギーの発症要因や薬剤耐性菌の増加を複合的に助長して、副鼻腔炎の成因に関与すると考えられています。
局所解剖学的要因
中鼻道自然口
中鼻道自然口のルートは上顎洞、前頭洞、前篩骨蜂巣が開口しているため、形態異常や病変が生じると副鼻腔の換気や排膿の障害となります。
他には、中鼻甲介の気泡化による肥大や篩骨胞の肥大。中鼻甲介の彎曲、鈎状突起などがあると、副鼻腔自然口の狭窄や閉鎖が生じやすくなります。
粘膜防御機能
気道液の生産分泌と粘液綿毛系
鼻腔や副鼻腔などの気道粘膜を覆う粘液綿毛系は気道の防御にとって重要な機能です。絶えず動く機械的な異物運搬機能や、粘液層にはタンパク質分解酵素や免疫グロブリン、分泌細胞で生産されるムチンと呼ばれる粘液糖蛋白など、多彩な生理活性を伴う物質が含まれており、何重にも張り巡らされたバリアと言えます。
粘膜免疫機構
粘膜に含まれる免疫グロブリン(分泌型IgA)は、上気道から侵入する細菌などの微生物を凝集、中和して粘液綿毛系により胃に送り殺菌するという防御機能があります。
副鼻腔骨リモデリング(再構築)
副鼻腔炎の慢性化は、粘膜の病態と骨の病態も重要な因子です。副鼻腔粘膜面の骨膜下には緻密層があり、その表面には骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞が分布し、骨吸収と骨形成を繰り返す骨リモデリングが行われています。
遺伝的要因
慢性副鼻腔炎の原因として遺伝的要因は確立されていません。
慢性副鼻腔炎患者40例中、両親の一方または両親が副鼻腔炎であったのが30例(75%)であり、健常者25例中、親が副鼻腔炎であったのは4例(16%)という報告。
また、両親の一方が副鼻腔炎の場合、子供への副鼻腔炎の出現率は60.2%。両親共に副鼻腔炎の場合は82.6%、そして両親が健常者の場合は、子供への出現率が10.0%だったという報告もあることから、遺伝的要因も考えられます。
参考URL
http://miuse.mie-u.ac.jp/bitstream/10076/3067/1/AN001160790361101.pdf
アジア人特有のHLA-B54(びまん性汎細気管支炎に関連する遺伝子素因)への関与は、肯定と否定する報告があります。HLA-B54は、アメリカンインディアンとユダヤ人を除くモンゴリアンのみが保有する遺伝子であり、日本人の10数パーセントが保有しているそうです。
副鼻腔気管支症候群は、HLA-B54との関わりが強く、びまん性汎細気管支炎では50~60%が保有しているといわれます。
嚢胞性線維症は、白人に好発する常染色体劣性遺伝疾患であり、難治性下気道感染症とともに、消火器病変と慢性副鼻腔炎の合併頻度が極めて高いそうです。しかし、東洋人には極めて稀とされています。